エンジニア採用はなぜ難しい?現役エンジニアが語るホンネと育成戦略
2023.11.18

ITエンジニアの採用に積極的に取り組む企業が増えています。

背景としては、以下のようなものが挙げられます。

  
  ・人手が足りない

  ・スタッフの負荷が増加している

  ・システムの開発・改修に時間がかかる

  ・社内でITシステムの内製化を行えるようにしたい


しかしながら、求める人材がなかなか集まらない、面談まで進んでも内定までは至らない、といった課題に頭を悩ませる採用担当の方も多いのではないでしょうか?


そこで本記事では、ITエンジニアの採用が難しい理由や、採用のためのポイント、手法などについて解説していきます。


エンジニア採用が初めてという方から、「うまくいかない」という経験者まで、ぜひご参考ください。



1.調査データから見るITエンジニア採用の動向


日本国内では、2030年までに最大79万人のIT人材が不足するといわれています。

IT人材不足について、世界規模で確認すると2020年時点で約4,000万人のエンジニアが世界で不足しており、2030年までに8,500万人が不足する、というレポートもあるほどです。


世界的に人材不足が続くエンジニア市場、国内の求人状況について詳しく見ていきましょう。

①再び上昇するエンジニアの求人倍率

ITエンジニア・クリエイター向け転職サービスを提供するレバテックの調査によると、COVID-19の流行拡大前まではITエンジニアの求人倍率は、5倍前後で推移していました。

ITエンジニア・クリエイター正社員転職

出典:ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月


しかし、2021年以降は求人倍率が常時15倍を超えています。

在宅ワークやデジタル教育、デジタル決済などが浸透し、これまで以上にITに対する需要が拡大したことが背景の一つと考えられます。


2022年8月の全国平均有効求人倍率が 1.3倍であることをふまえると、人材獲得が難しい分野であることが伺えます。

②Java、Pythonの人気が高い

上述したレバテックの調査で求人倍率の高い「エンジニア求人」の内容を確認すると、特に件数の多い分野は下記の2つでした。


  ・Python 求人倍率:16.6

  ・Java 求人倍率:21.8

ITエンジニア・クリエイタースキル・職種別求人倍率

出典:ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月


これらの分野の需要が高い要因はそれぞれ異なります。


Pythonは、第4次産業革命で注目されている人工知能、ビッグデータの分野によく利用される言語です。


Javaは、既存のデジタルプラットフォームで頻繁に使用されていて、引き続き需要が高い言語です。


③約8割の企業がITエンジニアの不足を感じている

一昔前は「ITエンジニア不足」といえば、IT企業の開発者が不足しているイメージでした。


しかし、今はパソコンやデジタル機器を利用しない会社は少なく、また内製化への取り組みが進んだことでITエンジニアがIT企業以外に所属する人数も多くなりつつあります。

自社のデジタル化やDXを推進するITエンジニアもまた、ニーズが高まっているのです。


このように、エンジニア需要は裾野が広がってきている状態です。


アクサス株式会社が行ったアンケートでは、約8割の企業がITエンジニア不足を感じている、という結果になりました。


こうした調査データからも、ITエンジニア採用のハードルは、非常に高いことが伺えます。



2.なぜITエンジニア採用が難しいのか?


せっかく応募があっても採用に至らないケースはどの職種でもあり得ますが、ITエンジニアの採用時に、他の職種と特に違う点を整理します。

①即戦力を求める傾向が強い

多くの場合、現在の提供サービスや、開発中のサービスに従事するエンジニアが足りない、という状況が前提と思います。


新しい人材がその開発現場に適応するか、そのための条件は何か、事前に開発現場からヒアリングして募集をかけるのが一般的です。


しかし、選考の際に面談した開発責任者からいい返事をもらえないケースもあるでしょう。


応募者が「Python」「Java」を使用可能だとしても、書き方やプロジェクトのまとめ方は現場によって変化します。

つまり、「プロジェクトにぴったり合った人材」となると、非常に狭き門になるということです。

②需要に対して供給が追い付いていない

テクノロジーの進化は早い、という認識を持っている方は多いと思います。


ではどの程度早いかを具体的に感じていただくため、以下の数字を見てください。


  ・Amazon 2年

  ・Apple 4年

  ・Google 5年

  ・Groupon 2年

  ・eBay 3年


上記は、それぞれの会社が設立から上場までにかかった年数です。


短期で上場基準を満たす、ということはそれだけ事業の成長スピードが速いことを意味します。


このようにテクノロジーの進化や事業に求められる成長スピードが速いと採用や育成が追い付かず、人材の供給が不足します。

その結果、求人倍率が高まり採用が困難、という状況に陥っていると考えられます。

③働き方や価値観の変化

一昔前は、学校を卒業した後に企業に就職して仕事をする、という流れが一般的でした。


しかし今は、政府が副業人材の活用を推進したり、フリーランスとして活躍する人が増えたりと、働き方の選択肢が広がっています。


ITエンジニアにおいても、フリーランスや自身で開発したプロダクトで生きていくことは可能です。

時間や場所にとらわれない働き方を実現しながら、一定の収入を得ている人も少なくありません。


働き方やライフスタイルの多様化によって、企業に求められるものも変化しています。

例えば、キャリアプラン上のスキルアップにつながる企業、学べる企業、柔軟にワークスタイルを選べる企業などです。

つまり、エンジニアの「ニーズ」を把握することが、採用においても重要な意味を持ちます。



3.ITエンジニアを採用するためのポイント

ここまでITエンジニア採用がいかに難しいか、という話をしてきました。


ここからはそれらの問題をどうすれば解決できるか、ということについて解説していきます。

①人材採用で有効な「採用マーケティング」という考え方

「採用マーケティング」は、これまでの一般的な人材採用の概念とは、やや異なる発想の採用手法です。


従来の人材採用は、基本的に応募に対して選考を行う、という受け身のスタンスが中心でした。


しかし、採用マーケティングでは「攻め」も行います。


求めるエンジニア像を明確に定め、そのエンジニアのニーズや、情報収集の方法を探ります。文字通り、マーケティング活動を行います。


ターゲットとなるエンジニアがよく利用するSNSはどれか、自社はどのような情報発信をすべきか、など応募前の「企業認知」から「興味喚起」、そして「求人の認知」、「応募」という一連の流れを、ストーリー立てて、プロアクティブに行うのが採用マーケティングです。


ただし、採用規模が大きく継続的な場合は、採用マーケティングは有効ですが、事前のリサーチなどに手間もかかるため、単発募集・短期募集という場合は、向かないケースもあるので注意が必要です。

②求人媒体以外での情報発信を積極的に行い認知してもらう

最前線で働く即戦力ITエンジニアは、仕事に追われて、求人情報をほとんど見ない場合もあるでしょう。


開発現場が求めている人物像は、ハイレベルな技術者であることが多いです。

その方達がみる情報媒体を考えれば、どのような情報発信をすべきか、自ずと答えは出てきます。


たとえば自社技術に関する紹介ブログやYouTubeでの技術解説、テクノロジー系イベントへの出店、QiitaやStack Overflowなどへの投稿などを行うと、最前線で活躍するエンジニアの目に自社及び求人情報について見てもらえる可能性が高まります。


留意点としては、発信する情報が、自社の守秘義務に反していないかどうか判断する必要がある点です。

現場に任せきりにするのではなく、情報公開前に、社内でダブルチェックなどして、機密情報が書かれていないかといった確認を取る必要があります。

③現場のメンバーも採用計画やプロセスにしっかりと巻き込む

人事担当者への求人依頼の第一報は、マネージャーなど管理者からによるものであることが一般的です。


採用担当がその開発チームの業務内容や組織風土を熟知していれば、スムーズな採用も期待できますが、そうでない場合は注意が必要です。

採用したいITエンジニアの詳しいスキルセットや人物像、経験などがわからなければ、効果的な採用活動ができないからです。


開発現場の管理者が忙しければ、他のメンバーに求める人物像をくわしくヒアリングし、情報を精査しましょう。


場合によっては、募集要項は開発チームにまとめてもらう方が、応募者にとって、よりリアルかつ親近感の湧く文面になるケースもあります。

その結果、採用時のミスマッチを減らせ、より自社にあった人材と出会える確率が高まります。

④ITエンジニアが求める柔軟な働き方や制度を整備する

ITエンジニアが求める柔軟な働き方や、制度を整備することもまた重要です。


報酬額はもちろん、リモートワークの可否、OFF-JTなど学習環境の充実、モダンな開発環境の提供などは一例です。


仕事とプライベートは完全に分離でき、自身のスキルアップにもつながる、という環境ができれば、エンジニアにとって魅力的な職場といえます。





4.ITエンジニアの採用手法とそのメリット・デメリット


ITエンジニア採用の手法について、代表的なものをご紹介します。

①求人サイト

ITエンジニア採用に一定の予算がある場合は、求人サイトの活用をお勧めします。

求人サイトはアクセス数も多く、母集団形成に有効だからです。


代表的な国内エンジニア系求人サイトは、以下が挙げられます。


  ・Qiita Jobs

  ・LAPRAS

  ・paiza転職

  ・Findy

  ・Green

  ・Indeed

  ・Linkedin など


費用は、登録時にかかるものから採用決定時にかかるものまで様々です。

②転職エージェント

求人サイトで求める人材像に出会えない場合、転職エージェントが有効かもしれません。


転職エージェントは、求める人材像にマッチする人材を自社の登録者などさまざまな方法で紹介してくれるサービスです。

なかでもITエンジニア専門の転職エージェントは、業界知識や経験も豊富なので、採用活動の強い味方になってくれるでしょう。


エンジニア系の転職エージェントをご紹介します。


  ・レバテックキャリア

  ・マイナビIT AGENT

  ・TECH STOCK

  ・WORKPORT

③スカウトメール

スカウトメールは、テック系のブログやYouTubeを公開している一般のITエンジニアに直接メールを送ってコンタクトを取ったり、求人サイトに登録している求職者に対して求人サイトを通じてメールしたりする方法です。


送信対象のリスト作成や文面作成の手間がネックになりますが、スカウトメールを送ることが可能なGreenなどのサービスを利用すると効率的です。


大量採用ではなく、求める人材をピンポイントで採用したいという場合に適した手法といえます。

④リファラル採用

自社の従業員に、条件に合致する知人や友人を紹介してもらう採用方法を「リファラル採用」といいます。


会社と候補者の接点がゼロではないので、事前情報を集めやすく、信憑性も高い情報を入手できます。


ただしリファラル採用は、「仕組化しにくい」という課題もあります。仕事で忙しい現場のITエンジニアはそれどころではないからです。

またそもそも「紹介したい」と思える職場であることが前提条件です。

​​⑤SNS

SNSを活用した採用は、大きく2種類です。1つ目はWantedlyなどの企業と個人を結ぶビジネスSNS、もう1つが自社運営のFacebook、LINE公式アカウントやTwitterなどを通じた採用活動です。


Wantedlyは無料で登録でき、有料オプションを上手に組み合わせることで、人材獲得に期待できます。


Facebook、LINEなどは、自社のアカウント(あるいは採用担当のアカウント)での情報発信や交流を通じて、候補者との距離感を徐々に縮められるというメリットがあります。

ただし、定期的に情報発信するなどの手間がかかります。

また「炎上」などのリスクもゼロではありません。

⑥人材派遣

ITエンジニア採用に十分な時間と手間をかけることができない場合や、急きょ人材が必要になったという場合は「人材派遣」も有効です。


人材派遣会社には多くの人材が登録しているので、条件によっては短期間に大量採用も可能です。


地方では都心に比べて人材が少ないことから人材派遣での対応が難しかった時期もありましたが、最近ではリモート型の人材派遣サービスも提供されています。


注意点としては、派遣コストと、派遣期日です。

派遣会社を通すため、費用はやや割高になります。


派遣社員は基本的に派遣期間終了後、別の企業で仕事に従事します。

つまり、派遣社員が開発したコードにエラーがあったとしても当事者がいない、といったケースが考えられます。

それも踏まえ、どこを任せるか、派遣期間終了時の引継ぎ方法などを明確にしておく必要があります。

⑦業務委託

ITエンジニアの業務委託も人材不足を補う手法として有効です。

Lancersやクラウドワークスなどを通じて、個人・法人と仕事を行う方法が一般的です。


低コストで人材確保できる可能性がある一方で、スキルのミスマッチや労働実態のわかりにくさといった課題があります。


また守秘義務契約を交わしたとしても、情報漏洩のリスクがともなう点には留意が必要です。

⑧GitHub採用

GitHubはエンジニアがよく利用するWebサービスです。

GitHubの検索機能を使うと良質なエンジニアリストを作成できる可能性があります。


具体的には場所とプログラミング言語、フォロワー数などを検索条件に設定し、検索します。

プロフィールに記載されたTwitterやメールアドレスなどから、候補者と直に連絡が取れる場合もあります。


各個人のプロフィールやコードも見られますので、どのようなスキルや経験を持っているのか事前に確認も可能です。


GitHub 詳細検索ページ:https://github.com/search/advanced?q=django&type=Repositories



5.即戦力採用だけでなく、育てるという戦略


ITエンジニア採用と並行して取り組むべき活動として、「育成」があります。


つまり未経験エンジニアや、経験の浅い人材を採用して、求めるスキルまで引き上げるという手法です。

実際、一部の企業などでは、未経験者採用も活発に行われています。


今は育成の環境が不十分だとしても、適切なカリキュラムと適切な教材、サポートを用意できれば決して無理なことではありません。


また筆者の経験上、会社のことをよく知っているITエンジニアは強力な戦力になります。


ITエンジニアの採用を検討する際、多くの開発責任者は、技術的な面だけでなくその人の性格やコミュニケーション力を重視します。


それは開発チームにとって、チームワークが重要だからです。


コミュニケーションが取りやすい社内環境で、優秀なエンジニアが誕生すると事業の成長への貢献が期待できます。




6.トレノケートの新入社員研修とは


ITエンジニア採用が改善する見込みは少ない、しかし育成カリキュラムや教材を準備するのはなかなか難しい──。

この問題をトレノケートの新入社員研修で解決してみませんか?


トレノケートの新入社員研修はクライアントごとに要望をお伺いし、独自のカリキュラムを作成します。

またオンラインとオフラインの両方を活用し、研修・学習をサポートすることが可能です。


トレノケートでは新卒者向けの研修のご相談が多いですが、IT初学者を数ヶ月で現場配属可能なレベルへとスキルアップさせる実績のあるトレーニングです。


少人数から100名以上の研修も可能で、Web関係からシステム、インフラまで幅広い研修をカバーしています。

世界で最も優れたIT研修企業20社に選出されたトレノケートの新入社員研修、ぜひご検討ください。



7.ハイブリッドのITエンジニア研修の成功事例


トレノケートがSCSK株式会社様の新人研修を行った事例をご紹介します。


約250名の新入社員に対して、約60日間にわたり以下の表の研修を実施しました。

段階研修期間研修目的・概要実施方法
基礎編インフラ 20日間ネットワークやデータベースの仕組みを理解し、
各種OSの構成や運用管理ができるようになる。
オンライン/集合 (並行実施)
 開発 25日間アルゴリズムを学んだ後、Javaを使って
Webアプリケーション開発ができるようになる。
オンライン/集合 (並行実施)
応用編総合演習 7日間演習環境に必要なインフラを新入社員が自ら構築し、Webアプリケーションをチームで開発しデプロイする。
その成果や学びを発表する。
オンライン/集合 (並行実施)
実務編配属先別5日間総合演習までに学習したことに加え、
現場業務に必要なスキルを学ぶ。
オンライン/集合 (並行実施)

引用:研修サービス事例:SCSK株式会社

https://www.trainocate.co.jp/gkservices/cases/case202011.html




8.まとめ


ITエンジニア採用は、難易度が高く手間やコストもかかります。


もし手段を限定せず、目的達成が第一優先であれば、人材育成、研修という方法も選択肢のひとつです。


トレノケートのエンジニア研修について、詳しくは以下よりご覧ください。


※掲載された社名、製品名は、各社の商標及び登録商標です。

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