アジャイル開発手法6選:スクラムからDSDMまで!選び方と組み合わせも解説
1.アジャイル開発とは?
アジャイル開発は、ソフトウェア開発手法の一つです。
開発サイクルを細かく分割して実装とテストを繰り返すことで、仕様変更に柔軟に対応します。
従来のウォーターフォールモデルと比較して、アジャイル開発は機能要件の洗い出しから仕様変更に至るまでの流れがスムーズです。
顧客の要件が変化するビジネス環境において、頻繁なフィードバックと改善を取り入れることで、最終的な製品の質を高めることを目指します。
アジャイル開発の原則は2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」にまとめられ、現在もその価値観が広く共有されています。
この文章は4つの価値観と12の原則で構成されます。
プロセスやツールよりも個人と交流、包括的なドキュメンテーションよりも動作するソフトウェア、契約交渉よりも顧客との協力、計画に従うよりも変化への対応を重視します。
▼アジャイル開発について詳しくはこちら
アジャイル開発とは?メリットやウォーターフォールとの違いをわかりやすく解説
2. ありがちなアジャイル開発の失敗事例
アジャイル開発は、迅速な市場変化に対応し、顧客満足を最優先にする開発手法です。
しかし、その柔軟さから、組織やプロジェクトの状況によっては上手くいかないこともあります。
以下で、よく見られる3つのアジャイル開発の失敗事例を簡単にご紹介します。
① 開発期間内に完成しなかった
アジャイル開発で「開発期間内に完成しなかった」という失敗は、プロジェクトの範囲(スコープ)管理のミスが原因の一つです。
アジャイル開発では、要件が変わる中でもプロジェクトを進めるため、要件の変更や機能の追加が頻繁に行われます。
これが適切に行われないと、開発範囲が思わぬ方向に広がり、期間内の完成が難しくなります。
各スプリントの作業の見積もりの問題も原因の一つです。
タスクの切り分けや見積もりが正確でないと、開発の予測が難しく、スケジュールが遅れることがあります。
② 顧客が求めていたものを作れなかった
顧客の要望や期待を正確につかむことができず、それを製品にする段階での不足があると、アジャイル開発はうまくいきません。
アジャイル開発は、反復的な作業と顧客のフィードバックの受け取りに重点を置いています。
しかし、顧客との話し合いが十分でないと、できた製品が顧客の期待を満たさないケースがあり得ます。
さらに、新しいタイプの製品を作る際、顧客が製品を理解できず、適切でないフィードバックをすることも考えられます。
これを避けるためには、顧客との密なコミュニケーション、顧客の業界への理解、そして顧客の意見を取り入れて製品を良くする仕組みの構築が大切です。
③ 開発が終わっても利益が出なかった
アジャイル開発は、顧客の要望をすぐに反映し、市場の変化に対応することに優れた開発手法です。
しかし、市場における評価や予測、コストの管理は解決しきれません。
市場の選び方やビジネスモデルはアジャイルの範囲外の問題です。
優れた開発手法を使っても、価格や売り方、収益の考え方が適切でなければ、製品の価値が伝わらず、利益を得るのが難しくなります。
コストの管理を怠ると、利益に大きな影響が出ることもあります。
このような問題を避けるためには、市場の理解、良いビジネスモデルの設計、しっかりとしたコストとリスクの管理、そして顧客との協力が重要です。
3.事例から学ぶアジャイル開発失敗の原因
アジャイル開発では、顧客とのコミュニケーションと手法そのものへの理解が重要です。
次に、アジャイル開発失敗の主要な4つの原因を詳しく見ていきます。
① チーム内でのコミュニケーション不足
アジャイル開発の中心は、効果的なチーム内コミュニケーションです。
それが欠けると、共通の理解ができず、ミスや誤解が生じ、プロジェクトへの影響が考えられます。
アジャイル開発は日々変わる顧客のフィードバックを取り入れます。
それに、開発前の合意がウォーターフォール開発よりも少ないので、コミュニケーションの欠如が認識の違いを生むこともあります。
各メンバーが何をしているかがわからなくなり、生産性が低下することも。
メンバー間の信頼や一体感も失われるリスクがあります。
これはアジャイルの特性を最大限発揮する上で非常に重要な観点です。
問題を解決するためには、スタンドアップミーティング(短い会議・すり合わせ)の定期的な実施や役割の明確化、開放的なコミュニケーション環境の整備が求められます。
② 顧客とのコミュニケーション不足
アジャイル開発では、顧客のニーズを理解し、適切なソフトウェアを提供するために、顧客とのコミュニケーションが非常に重要です。
それが不足すると、製品の目的や要件の誤解や、顧客の理解不足が生じる可能性があります。
また、顧客からのフィードバックが適切に取り入れられないと、ソフトウェアは完成しても、求められたものとは異なる可能性が高まります。
顧客とのコミュニケーションを強化するには、定期的なフィードバックの仕組みを作る必要があります。
発注者がいる場合は、週に一度の会議で進捗を共有すること、消費者向け製品であれば、フィードバック機能の導入などが考えられます。
アジャイル開発の成功には「変化を歓迎する」という考えと、顧客との継続的なコミュニケーションが欠かせません。
③ プロダクトに対する理解不足
アジャイル開発では、開発するプロダクトへの十分な理解が必要です。
製品の目的、ユーザーのニーズ、市場の動向を理解することで、優れた製品設計や適切な機能実装が可能となり、ユーザー満足度も向上します。
しかし、プロダクトへの理解が足りない場合、製品がユーザーの期待と異なる機能を持つか、必要な機能を欠くリスクが高まります。
また、開発チームが製品の真の価値を把握していないと、開発が非効率的になり、不要な機能に時間やリソースが使われることも。
この問題を解消するためには、開発の初期段階でプロダクト理解を深めるための時間が必要です。
製品のビジョンやターゲットユーザー、利用シーンを明確にして、それに基づき機能や設計を考える必要があるからです。
開発中にも、顧客やエンドユーザーのフィードバックを活用して、ニーズに応じて開発方向を見直すべきです。
アジャイル開発の特徴は、このような調整が容易であること。
しかし、その利点を生かすためには、プロダクトに対する継続的な理解が不可欠です。
④ アジャイル開発への理解不足
アジャイル開発への理解不足は、プロジェクトの失敗を招く大きな要因となります。
たとえば、反復的なフィードバックを無視して計画的に進めすぎる、或いは顧客のニーズを理解せずに開発を進めるなどのリスクがあります。
これらの問題は、開発の遅延や製品品質の低下、顧客満足度の低下につながることがあります。
アジャイル開発を正しく理解するためには、アジャイルマニフェストとその背景にある価値観の学習が欠かせません。
さらに、スクラムやカンバンなどのアジャイル手法のトレーニングや実践が必要です。
実務経験だけでなく、アジャイルについての勉強会や討論の場を設けることで、チーム全体の理解を深めるべきです。
4. アジャイル開発を成功へと導く方法
アジャイル開発は、柔軟性と顧客参加を中心とした開発手法です。
しかし、成功するためには手法の正しい理解と適切な運用が不可欠です。以下で、成功に必要な5つのポイントについて解説します。
① アジャイル開発手法、特に「スクラム」を採用する
「スクラム」はアジャイル開発の中でも特に評価されるフレームワークで、製品開発の効率と価値を高めることを目的とします。このフレームワークでは、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームの3つの役割が重要です。
短い開発サイクル、通常2-4週間の「スプリント」を経て、製品の質を向上させます。
スクラムのメリットとして、明確な役割や規則、サイクル期間が定められている点が挙げられます。
これにより、開発中の課題や進捗などが把握しやすくなります。結果、チームは開発状況を共有し、一貫した品質で製品を開発することが可能となります。
また、スクラムはコミュニケーションの活性化にも役立ちます。
日々のミーティングで進捗と目標を共有し、問題を速やかに解消することが可能です。
スプリントの終わりには、製品の状況やチームの成果を評価する時間も確保します。
▼スクラムについて詳しくはこちら
スクラムの意味とは?アジャイルとの関係性や開発方法を簡単に解説
② チーム内の役割を明確にする
アジャイル開発、特にスクラムにおいて、役割の明確化は重要です。
スクラムでは、「スクラムマスター」「プロダクトオーナー」「開発チーム」の3つの役割が中心となります。
プロダクトオーナーは、製品のビジョンや計画を策定し、要件を整理し、優先順位をつけます。外部との調整も担い、チームが顧客のニーズを正確に把握できるようサポートします。
スクラムマスターはチームのパフォーマンス向上をサポートし、障壁を取り除き、開発に集中する環境を提供します。
開発チームは、スプリント毎に製品の機能を設計、開発、テストし、リリースします。役割が明確になることで、技術的課題に効果的に取り組むことができます。
③ 顧客の理解と協力を確保する
アジャイル開発での成功には、顧客の理解と協力がとても大切です。
アジャイルの最大の利点は、顧客の意見をすぐに反映し、希望に近いプロダクトを生み出せる点にあります。
そのため、顧客とのしっかりとしたコミュニケーションが欠かせません。
顧客との頻繁な話し合いにより、誤解を避け、良い製品を効率的に作ることが可能となります。
さらに、アジャイルでは仕様変更も容易です。このため、初期の予想と異なる結果になっても、スムーズに修正ができます。
これも顧客にとってはメリットです。
顧客にアジャイルの利点を伝え、協力を得ることで、成功の可能性が上がり、顧客の満足も高まります。
④ プロダクトの特性を正確に把握する
プロダクトの特性とは、開発の規模や新規性、仕様の固定度などを指します。
たとえば、アジャイルは変更が多い新規事業に向いていますが、大規模で仕様が固定されたプロジェクトでは最大限の効果を発揮できないこともあります。
それらを踏まえ、プロダクトの特性を分析することが重要です。
プロダクトがアジャイルに適しているかの判断は、開発の手法やチーム構成に大きく影響します。
⑤アジャイルをリードする開発者の配置
アジャイル開発の成功は、アジャイルをリードする人材がチームにいるかどうかにも大きく影響されます。
アジャイルの特性とその実践には、特別な知識や経験、深い理解が求められるからです。
アジャイル開発では、チームの連携が必須です。コミュニケーションは、アジャイルの原理を知っている人によって効果的に行われるべきです。
この役割を果たす人材がいると、プロジェクトがうまく進行します。
また、顧客関係も大切です。ウォーターフォール方式とアジャイルの違いをはっきり伝え、アジャイルの利点を説明できる人がいると、開発がスムーズに進むだけでなく、顧客の満足度も上がります。
5.まとめ
アジャイル開発は、顧客満足度を高め、付加価値の高い製品を生み出すことを可能にします。
しかし、アジャイル開発を遂行できる人材は、現状ではなかなか見つけることが困難です。
市場でもIT人材の不足が叫ばれており、優秀な技術者を外部から採用するのは容易ではありません。
トレノケートでは、今後アジャイル開発を推進できる人材を教育するカリキュラムを提供する予定です。
またエンジニア人材育成のための「伴走メンタリングサービス」も提供しています。
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