アジャイル開発手法6選:スクラムからDSDMまで!選び方と組み合わせも解説
- 1. スクラムとは
- 2. スクラムの基本概念
- 3.スクラムの開発体制と3つの役割
- 4.スクラムの5つのイベント
- 5.スクラムの3つの成果物
- 6.スクラムについて学べるおすすめの書籍
- 7.スクラムのメリット
- 8.スクラムのデメリット
- 9.スクラムを成功させるには
- 10.まとめ
スクラムは、アジャイル開発手法の一つで、プロジェクト管理において、チームがより効率的に働くための方法論です。
本記事では、
・スクラムとは?
・スクラムとアジャイル開発の違いは何?
といった基本的な内容から、
・スクラムのイベントについて
・スクラムを成功させるには?
など、より実践的な内容を、詳しく解説していきます。
1. スクラムとは
スクラムは、アジャイル開発手法の一つで、チームが協力して短期間で高品質なソフトウェアを開発するための方法論です。
プロジェクトをスプリントという1週間から4週間程度の期間に分割し、その中で必要な機能や要件を優先順位に従って実装します。
スプリントごとに小さな単位での開発とテストを繰り返すことで、開発期間を短縮するだけでなく、ユーザーからのフィードバックの反映も素早くできるため、効果的な開発が可能です。
また、スクラムでは定期的にミーティングを行います。進捗状況や課題を共有することで、チーム全体での進捗管理が容易になり、課題解決がスムーズになります。開発手法にスクラムを取り入れることで、チームの生産性やコラボレーション力を向上させ、開発プロジェクトを成功に導くことが可能です。
①アジャイル開発とは
そもそもアジャイル開発とは、ソフトウェア開発における反復型開発手法のひとつで、計画・実装・テスト・リリースを繰り返すことで、変化に対応しやすい開発プロセスを実現する手法です。
2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」が公表され、この宣言にはアジャイル開発の4つの価値観が掲げられました。
・プロセスよりも個人と対話
・包括的なドキュメントよりも動くソフトウェア
・契約交渉よりも顧客との協調
・計画に従うよりも変化への対応
これらの価値観は従来型(ウォーターフォール型)の開発手法では満たせなかったニーズに応えるものとして、エンジニアに広く受け入れられることになります。
②アジャイルの手法の中でなぜスクラムを使うのか
スクラムは世界中で最も広く使われているアジャイル手法の一つですが、他にも多数のアジャイル手法が存在します。
以下は、スクラム以外の代表的なアジャイル手法です。
カンバン
タスクをボードに表示し、ステータスを管理する方法です。目標に向かってタスクを進めますが、スプリントの枠組みがありません。
XP(eXtreme Programming)
XPはプログラミングの品質や開発プロセスにフォーカスしています。
テスト駆動開発やペアプログラミングなどの技術的な手法を取り入れた開発方法で、開発者のスキルが高くないと実践できません。
リーン
リーンは、無駄を排除し、最小限の生産で最大の価値を提供するアジャイル手法です。リーンは製造業でよく使われていますが、ソフトウェア開発にはあまり適用されません。
このように様々な手法がある中で、なぜスクラムが最も一般的に使われるのでしょうか?
それはスクラムが、サービスやプロダクトの開発スピードを高め、変化に強い柔軟さが特徴的なアジャイル手法であるためです。
またチーム主体のロールがあり、リーダーやマネージャーに責任を押し付けずにチーム全体でマネジメントを行います。
これらの特徴からスクラムは世界で最も広く使われているアジャイル手法となっているのです。
2.スクラムの基本概念
スクラムでは、経験主義とリーン思考が重視されます。
不確実性や複雑性が高い状況下では計画だけでは十分ではなく、実際に試してみて学ぶことが必要だという考え方が経験主義です。
またリーン思考は無駄を省いて価値を最大化するという考え方です。
これらの考え方から生まれた3つの柱と5つの価値基準が、スクラムの基本概念です。
①スクラムの3本柱
ソフトウェア開発は常に変化するユーザーニーズに応える必要があります。
スクラムは経験主義の考え方から、以下の3本柱を実現することで高品質なソフトウェアを作ることを目指します。
透明性(Transparency)
事実をありのままに提示し、プロジェクトの状況や成果物、役割や責任などが全ての関係者に明確に伝わること
検査(Inspection)
定期的にプロジェクトの進捗や成果物、プロセスを確認し、問題や改善点を見つけること
適応(Adaptation)
検査した結果に基づいて、必要な変更や改善を素早く行うこと
②スクラムの5つの価値基準
スクラムはチームが自律的にソフトウェア開発を行うことを目指しています。
そのため、メンバーが高いモチベーションを維持することが重要です。
以下の5つの価値基準は、チームが効果的に協力し合うための心構えや姿勢です。
・コミットメント(Commitment):自ら設定した目標や約束に対して責任を持ち、最善を尽くすこと
・フォーカス(Focus):目標に集中し、優先順位の高いタスクに集中すること
・オープンネス(Openness):互いに信頼し、意見や問題点などの情報を共有し、フィードバックを受け入れること
・リスペクト(Respect):互いに尊敬し、能力や価値観を尊重し、協力すること
・勇気(Courage):困難な状況にも立ち向かい、失敗から学ぶこと
3.スクラムの開発体制と3つの役割
スクラムでは、プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターの3つの役割が密接に連携してソフトウェアを開発します。
以下で、各役割の詳細について説明します。
①プロダクトオーナー
プロダクトオーナーは、製品やサービスのビジョンや価値を明確にする重要な役割を担います。
市場や顧客のニーズを理解し、それらを考慮しながら、製品やサービスの価値を定めます。
プロダクトオーナーには、ユーザーの要望を聞き、それらを優先順位付けして、バックログ(開発すべき機能や要件のリスト)に反映することが求められます。
これにより、開発チームは最も重要な機能や要件に優先的に取り組むことができるからです。
またプロダクトオーナーは、各スプリントで作成された成果物に対してフィードバックを与え、必要な修正や改善を指示します。
②開発者
開発者は、プロダクトオーナーが作成したバックログをもとに、スプリントごとに利用可能なインクリメント(成果物)を作成します。
このプロセスは、要件や優先順位を確認し、機能やタスクの実装方法を計画することを含みます。
開発者は、計画、設計、開発、テスト、デプロイメントを担当し、スプリント期間中に機能やタスクの実装に集中します。
また、進捗状況を監視しながら、必要に応じて計画を変更します。
③スクラムマスター
スクラムマスターは、チーム全体のパフォーマンスと品質向上に貢献する役割を担います。
プロダクトオーナーや開発者だけでなく、ユーザーやその他のステークホルダーとも良好な関係を築き、チームの自己組織化と自己改善を促進させます。
スクラムマスターは、プロダクトオーナーや開発者のサポートを行い、スクラムの原則やプロセスを守るように促すことで、スクラム開発を円滑に進めます。
バックログの管理やスプリントゴールの設定、チームメンバーの能力向上の支援など、幅広い業務を遂行します。
4.スクラムの5つのイベント
スクラムでは、下記の5つのイベントを繰り返し行いながら、開発を進めていきます。
・スプリント
・スプリントプランニング
・デイリースクラム
・スプリントレビュー
・スプリントレトロスペクティブ
それぞれのイベントについて、以下に解説します。
①スプリント
スプリントとは、スクラム開発における開発作業期間のことです。
スプリントは、一般的に1週間から4週間程度の期間であり、この期間中にチームは計画した作業を完了し、完成品や成果物を提供します。
この期間は固定されており、基本的には途中で変更されることはありません。
スプリントは、チームが目標に向かって協力し、効果的に作業できるように設計されます。スプリントの期間中は、定期的にフィードバックを得て、改善点を見つけていきます。
またフィードバックは、チームメンバー全員が共有し、作業の質を向上させるために活用されます。
②スプリントプランニング
スプリントプランニングとは、各スプリントの開始前に行うイベントです。チームがそのスプリント期間中で何を達成するか(目標)、どうやって達成するか(タスク)を定めます。
スプリントプランニングは、チームが共通の理解と方向性を保ち、一致団結して作業を進めるために必要なイベントです。
また、優先順位や見積もりなどを明確化することで作業効率が向上し、プロジェクト全体がスムーズに進められます。
スプリントプランニングはスクラムにおいて重要な役割を担うため、十分に準備し実施することが必要です。
③デイリースクラム
デイリースクラムとは、毎日チームメンバー全員が立ち話で会議を行い、プロジェクト全体の進捗や品質を把握するためのイベントです。
この会議は、以下の項目について報告します。
・昨日何をしたか?
・今日何をするか?
・困っていることはあるか?
これにより、チームメンバーはお互いの作業状況をタイムリーに共有し、課題について協力しあうことができます。
デイリースクラムはチームが自己組織化・自己管理するために必要なイベントであり、プロジェクトの成功に重要な役割を果たします。
また、メンバーのモチベーション維持や連帯感を高める効果もあり、コミュニケーションの促進につながります。
④スプリントレビュー
スプリントレビューとは、各スプリントで開発した成果物の検証・フィードバックをもらう会議のことです。
この会議はスプリントの最終日に行われ、開発した成果物について、ユーザーやステークホルダーに評価してもらい、フィードバックをもらいます。
これらの情報は、次のスプリントで作業するタスクや優先順位を決定するために活用されます。
つまり、スプリントレビューは、チームがユーザーのニーズに応えるために必要な改善点を見つける重要なイベントといえます。
⑤スプリントレトロスペクティブ
スプリントレトロスペクティブとは、各スプリントが終わった後に行う会議で、チームがスプリントの成果を振り返り、改善策を見つけるための重要なイベントです。この会議では振り返りを行い、以下の点について議論します。
・スプリントのよかった点
・スプリントの悪かった点
・改善策
このような振り返りを行うことで、チームメンバーは自身の強みや弱みをより深く理解でき、問題の原因や解決策を明らかにできます。
また、次のスプリントに向けて改善を実践することで、チームのパフォーマンスやメンバーの成長を促します。
5.スクラムの3つの成果物
スクラムでは、以下の3つの成果物が定義されています。
・プロダクトバックログ
・スプリントバックログ
・インクリメント
これらの成果物には、「確約」と呼ばれる、目的や満たすべき条件が定義されています。
それでは、それぞれの成果物と確約について見ていきましょう。
①プロダクトバックログ
プロダクトバックログは、プロジェクトで実現する機能や要求事項を優先順位付けして管理するリストです。
このリストは、プロダクトオーナーによって作成、更新、整理されます。
プロダクトバックログは、プロダクトゴールとプロダクトバックログアイテムの2つから構成されます。
プロダクトゴールは、スクラムチームの長期的な目標であり、プロダクトバックログに関連づけられた「確約」です。
プロダクトバックログアイテムは、プロダクトゴールを達成するために必要な機能や要求事項を定義するものです。
開発の進行に伴い、プロダクトバックログは継続的に更新され、優先順位が変更されることがあります。
②スプリントバックログ
スプリントバックログは、各スプリントで実行するタスクや目標を具体的に定義した作業計画です。
開発チームによって作成され、スプリントゴールとスプリントバックログアイテムが含まれます。
スプリントゴールはスプリントバックログにおける確約で、そのスプリントで達成する成果物がどのような特徴か、どのような価値を生み出すのかを明らかにするものです。
スプリントバックログアイテムは、プロダクトバックログから選択されます。
プロダクトオーナーがプロダクトバックログの中から優先度の高い機能等を提示し、開発チームがそれらを実現するために必要な作業を洗い出し、スプリントバックログアイテムに追加します。
③インクリメント
インクリメントとは、各スプリント期間中に開発チームが作成した、リリース可能で利用可能な成果物です。
リリース可能とは、プロダクトオーナーがリリースすると判断すれば、いつでもリリースできる状態を指します。インクリメントにおける確約は、「品質基準を満たす、実行可能な成果物を提供すること」です。
開発チームは、「完成の定義」を満たしたインクリメントをスプリント期間内に作成し、プロダクトオーナーにレビューしてもらいます。
そして、フィードバックを受けて、プロダクトの品質向上や機能追加を行い、常にプロダクト品を改良していく必要があります。
6.スクラムについて学べるおすすめの書籍
ここまでは、スクラムの基礎知識を簡単に説明してきました。
この章では、より実践的な知識を学びたい方におすすめの書籍を以下に紹介します。
SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】スクラムチームではじめるアジャイル開発
スクラムの基本的な考え方や手法をわかりやすく解説した入門書です。
社内で初めてスクラムの導入するプロジェクトを任された「ボクくん」が、スクラムマスターとして悪戦苦闘しながらスクラム開発を進めるストーリーになっています。
実際のスクラム開発導入時の疑問や課題をマンガ形式で解決する様子が記載されているため、初心者でもスクラム開発のイメージがしやすい本です。
スクラムの導入にあたって必要な基本的な知識だけでなく、スクラムの導入後に発生するさまざまな問題とその対処の仕方までを幅広く紹介しています。
本書は、これから組織にスクラムを導入しようとしているマネージャー、チームで働くすべての方に向けた入門書です。
7.スクラムのメリット
スクラムは短期間で高品質なソフトウェアを開発する方法論ですが、その具体的なメリットは何でしょうか?
ここでスクラムのメリットを3つ紹介します。
高い生産性
最初のメリットは、プロジェクトの品質を維持しながら生産性を高められる点です。
各メンバーは自分たちの役割を明確に理解し、優先順位を設定し、定期的に進捗状況を報告し、作業を終了させることが求められます。
これにより、目標を達成するために必要な作業に集中でき、生産性を向上させられます。
柔軟性の確保
2つめのメリットは、変化に対応する柔軟性を確保できることです。
スクラムでは、スプリントレビューを定期的に行い、プロダクトの状態を確認しながら、必要に応じて計画を変更します。
また、顧客とのコミュニケーションが密に行われ、要件が変更された場合にも、迅速に対応可能です。
チームワークの促進
スクラムの3つ目のメリットは、チームワークを促進できることです。
メンバーが目標に向かって協力することができます。
メンバーは自己組織化され、役割と責任を理解し、プロジェクトを進めながら互いに協力します。
8.スクラムのデメリット
では、逆にスクラムのデメリットは何があるのでしょうか?
チームメンバーのスキルに依存しやすい
スクラムは、チームメンバーのスキルに品質やスピードが大きく依存するため、スキルに偏りがあるとチームのパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。
進行管理が難しい
スクラムはスピーディーに進む分進行管理が難しく、スクラムマスターの能力が十分に発揮されなければ失敗に陥る可能性もあります。
スクラムでは、継続的に進捗を確認し、改善する必要がありますが、これを適切に行うために、高い能力を持つスクラムマスターの存在が必要不可欠なのです。
9.スクラムを成功させるには
スクラムを成功させるには、高い能力を持つスクラムマスターの確保が重要です。
スクラムマスターは、チームの進行管理やリーダーシップ、コミュニケーション促進など、多岐にわたる能力が求められます。
スクラムマスターに必要なスキルとしては、以下が挙げられます。
プロジェクトマネジメントスキル
スクラムマスターは、プロジェクト全体の進捗管理を担当するため、プロジェクトマネジメントスキルが必要です。
そのほかにも、スケジュール管理、リスク管理、予算管理などの能力が求められます。
コミュニケーションスキル
スクラムマスターは、チームメンバーとステークスホルダーの間に立ち、情報共有や問題解決に取り組むため、高いコミュニケーションスキルが必要です。
問題解決のためのディスカッションをリードする能力や、プレゼンテーション能力も求められます。
リーダーシップス
スクラムマスターは、リーダーシップを持ってチーム全体の進行管理を行わなければなりません。
問題発生時に、チーメンバーをリードし解決に導く能力や、チームメンバーのモチベーションを向上させる力が求められます。
10.まとめ
スクラムはアジャイル開発における、中心的な開発手法です。うまく取り入れることで、システム開発を効果的に進められます。
いっぽうで、スクラムを成功に導くためには自立型のチームと、それを指揮するスクラムマスターの存在が必要不可欠です。
しかしながら、IT人材不足が叫ばれる中、そのような人材をゼロから採用するのは至難のわざと言えるでしょう。
そのため、自社のエンジニアを育成し、スクラムマスターとするケースも少なくありません。
トレノケートでは、e-ラーニングにメンターをプラスした「伴走型メンタリングサービス」を提供しています。
順次コースを拡大予定ですので、IT人材育成をご検討の企業はぜひご相談ください。
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