MVPとは?メリットデメリットやアジャイル・MBIとの違いまで徹底解説!
2023.11.07

MVP(Minimum Viable Product)とは、製品開発の初期段階で最低限の機能を持った製品を作り、市場の反応をテストする手法です。本記事では、MVPの基本的な概念から、その種類や開発事例、アジャイル開発との関係、メリットやデメリット、そしてMVPが適している事業まで、幅広く解説します。さらに、MVPを成功させるためのポイントも紹介します。MVPに関心がある方、導入を検討している方はぜひお役立てください。

1.MVPとは?

MVPは、製品の最小限の機能を持つプロトタイプです。市場での需要を早く確認するために使われます。簡易版の製品を作り、ユーザーの反応を収集して製品の方向性を調整します。特にスタートアップで、市場の反応を確認するツールとして活用されます。

①MVPはリーンスタートアップのプロセスの1つ

リーンスタートアップはプロジェクト管理の新しい手法です。「構築・計測・学習」のフィードバックループが中心です。初めに製品の初版を作り、市場の反応を収集し、データを基に改善します。この初期にMVPが使われ、製品の改善を迅速に行います。

②MVPとMBIの違い

MVPとMBIは、製品やビジネスの手法として注目されています。しかし、思想や使用シーンに違いがあります。

(1)MBI(Minimum Business Increments)とは

MBIは、製品やビジネス戦略を効果的に推進するための手法です。大きなプロジェクトを小さな単位に分解し、それぞれのビジネス価値を明確にします。何に取り組むべきかの優先順位をつけることでリソース投下の無駄を避け、市場のニーズに迅速に対応します。

(2)MVPとMBIの共通点

MVPとMBIの共通点を端的にまとめると下記の通りです。

  1. 反復的なアプローチ: 小さな部分に分解し、反復的に進めます。
  2. 価値の最大化: 最小のリソースで最大の価値を目指します。
  3. リスクの低減: 初期の検証でリスクを分散します。
  4. 顧客中心: 市場や顧客のニーズに基づいて行動します。


(3)MVPとMBIの違い

MVPとMBIの違いを目的、適用範囲、成果物、時間軸で比較すると下記になります。

 MVPMBI
目的製品の検証ビジネス価値の最大化
適用範囲製品ビジネスそのもの
成果物プロトタイプKPIやKGIの達成
時間軸市場投入前継続的な取り組み




2.MVPの種類と開発事例


MVPは多様な形で市場検証が行われます。この章で、MVPの代表的な種類と開発事例を紹介します。

①プロトタイプ

プロトタイプは製品やサービスの初期モデルを指します。実際の使用感を試すことで、市場の適合性や改善点を早く把握できます。

開発事例概要
X(旧Twitter)初期は短いメッセージを送信する機能だけでした。しかし、このシンプルなバージョンでユーザーの反応や使用パターンを観察。その結果、リツイートや画像投稿などの新機能が追加されました。
Instagram写真のシェアリングに特化した初期バージョン。ユーザーからのフィードバックを受け、フィルターやストーリー機能など、多くの新機能が導入されました。
Spotify音楽再生機能のみのスタート。しかし、テストユーザーの反応を基に、プレイリスト作成やアーティストのフォローなど、多岐にわたる機能が追加されました。

②コンシェルジュ

コンシェルジュはサービスやアプリを全自動で提供する代わりに、手動や半自動でサービスを提供します。初期のスタートアップに特に適しています。

開発事例概要
Airbnb創業者が自らのアパートを宣伝し、ゲストを受け入れる形でスタート。ゲストの実際の宿泊体験を提供することで、サービスのニーズや期待を直接学びました。この手法で、サービスの方向性や改善点を明確にしました。

③スモークテスト

スモークテストは市場の関心を確認する手法です。実際に開発をはじめる前に、商品動画や広告でユーザーの反応を測定します。

開発事例概要
Dropbox創業者がDropboxのコンセプトを説明するデモビデオを制作。技術者やエンジニア向けのフォーラムで公開し、興味を持ったユーザーからの反応を収集。この成功を基に、製品開発を進める自信を持ちました。

④ランディングページ

ランディングページはサービスの紹介や、ユーザー登録など特定の目的を持つウェブページです。訪問者を具体的なアクションに導く情報やビジュアルを提供します。

開発事例概要
Airbnb初期段階で簡潔なランディングページを設計。サービスの核となる概念を明確に表示。明瞭なビジュアルやユーザーレビューで、サービスの信頼性と便益を強調しました。このページを通じて、多くの初期ユーザーを獲得しました。

⑤オズの魔法使い

オズの魔法使いは製品のアイディアを手動でテストするアプローチです。ユーザーには自動化された製品に見せながら、裏側で人がプロセスを実行します。

開発事例概要
Zappos靴の写真をオンラインに掲載。購入希望時、創業者が実店舗で靴を購入し、顧客に送りました。この手法で、オンラインでの取引の概念を確立しました。
Amazon書籍の在庫を持たず、注文ごとに他の小売業者から手配。大量の在庫リスクを回避しながら、オンライン書店モデルを検証しました。
Groupon初期のアイテムは手動でブログに投稿。アイテム購入時、クーポンは手動でメール送信。この方法で、デイリーディールの概念の妥当性を確認しました。




3.MVPとアジャイル開発

MVPとアジャイル開発はよく混同されます。MVPは製品の最小版を指し、市場の反応をすぐに確かめるための手法です。アジャイル開発は、顧客の要望に柔軟に応える手法を指します。この章では、MVPとアジャイル開発の違いや、MVPにアジャイルをどう取り入れるかについて解説します。

①MVPとアジャイル開発の違い

MVPは「何を作るか」、アジャイルは「どう作るか」といえます。MVPは新しい製品の最小要件のプロトタイプを作る方法で、製品のアイディアや市場適合性を効率よく検証することが可能です。アジャイル開発は、変更にすばやく対応しながら価値を提供するソフトウェアの開発方法です。

②MVPとアジャイル開発の相性

MVPは市場の要望をすぐに確認する製品を指し、アジャイルは変化に柔軟に対応しながら価値を提供する開発方法です。この二つの考え方は、すばやいフィードバックの取得とそれに基づく改善を中心にしているので、MVPにアジャイルを取り入れるのはとても効果的です。



4.MVPのメリット


MVPには以下のような利点があります。


ユーザーのニーズを理解できるMVPで製品を早く市場に出すことで、ユーザーの反応や意見を得られます。

低いコストで始められるMVPは最小の機能だけなので、少ないコストと時間で市場に出せます。

リスクを減らせるMVPで市場の反応を早く確かめられるので、大きな投資をする前に市場適合性を確認できます。

開発が早くなるMVPは最小の機能だけなので、開発からリリースまでが早くなります。

方向転換がしやすい早く意見をもらえるので、製品の方向性を変える「ピボット」が簡単にできます。




5.MVPのデメリット


MVPにもデメリットはあります。


大規模開発に不向き:MVPは最小限の機能を持つため、大規模な製品開発には適していません。大きなプロジェクトでMVPを採用すると、市場の要求を満たさない製品ができるリスクが増えます。

市場調査コスト:MVPの目的は市場のフィードバック収集ですが、これには市場調査のコストがかかります。

MVPの開発難易度:最小限の機能をどう絞るかは難しいです。間違った判断で、MVPが市場の要求を満たさない可能性があります。

最初の印象の棄損リスク:MVPの機能は限定的なので、一部のユーザーに不十分に感じられることがあります。

方向性の見失い:MVPのフィードバックだけに頼ると、長期的なビジョンを見失うことがあります。


MVPは効果的ですが、適用や実施には慎重な計画が必要です。



6.MVPに適した事業


MVPは新しいアイディアやサービスの市場投入のアプローチとして注目されています。しかし、すべての事業に適しているわけではないです。特に、未開拓の分野やスタートアップの初期事業で力を発揮します。

①未開拓の分野

未開拓の分野は市場の要求が不明確です。ここでのMVPのメリットは、


・ユーザーのニーズの理解

・低コストでのスタート

・柔軟な方向転換

です。未開拓の分野では、MVPがリスクを抑えつつ市場の要求を掴むツールとなります。

②スタートアップの初期事業  

スタートアップは資金やリソースが限られています。MVPのメリットは、


・初期投資の最小化

・速やかな市場フィードバック

・柔軟な方向転換

・リスク軽減

となります。これらを踏まえると、MVPはスタートアップの成功のための重要な手法です。



7.MVPを成功させるためには?


MVPは新製品やサービスの市場導入に有効です。ただし、機能を絞っただけではMVPの価値は生まれません。成功のためには、MVPの目的を理解し、仮説と検証を明確に進め、ユーザーからのフィードバックを活かすことが大切です。

①MVPの性質を把握する

MVPは「最小限の実用製品」を指します。

MVPの性質:


最小の労力で最大の学び: MVPは製品を速やかに市場に出し、ユーザーの反応を得ることが目的です。

仮説検証の手法: 仮説が正しければ進む、間違っていれば改善や方向転換を行います。

柔軟性: 製品の改善や方向性を迅速に調整し、大きな失敗を避けます。

学びを重視: 市場やユーザーからの学びを最優先します。

②仮説・検証方法を明確にする

MVPは「仮説」と「検証」が中心です。

仮説検証のポイント:


明確な仮説の設定: 具体的な仮説で、ユーザーの反応を予測します。

検証方法の選定: アンケートやA/Bテストなど、目的に合わせた方法を選びます。

データの収集と分析: 得られたデータを分析し、仮説の正誤を判断します。

フィードバックループの作成: 仮説の検証とデータの分析を繰り返し、製品を改善します。

効果的なフィードバックの受取

フィードバックは製品向上の鍵です。


フィードバックを受け取る際のポイント:


具体的な質問をする: 明確な質問で、有益な意見を得やすくします。

異なるユーザーグループから収集する: 多角的な視点でフィードバックを得ます。

質を重視する: 製品向上に直結する意見を選び、焦点を絞ります。

フィードバックの背景を理解する: 意見の背景を知ることで、深い洞察を得ます。

④意味のあるMVPを作成

成功するMVPは事業目標やビジョンに沿ったものです。アジャイルのアプローチで、迅速なフィードバックループを確立し、製品を継続的に改善します。



8.MVPの肝となる人材育成


いまやMVPは事業の成功に欠かせないアプローチです。しかし、MVPやアジャイルの知識を持つ人材は希少です。企業は外部採用だけでなく、自社内の人材育成にも注力する必要があります。自社のビジョンや戦略に合わせたMVPを進めるためには、自社の文化や価値観を共有する人材が必要です。教育やトレーニングを通じて、MVPの専門家を育てることが、事業の成功に繋がります。


トレノケートでは、今後アジャイル開発を推進できる人材を教育するカリキュラムを提供する予定です。


またエンジニア人材育成のための「伴走型メンタリングサービス」も提供しています。


即戦力となる人材育成にお役立ててください。

伴走型


※掲載された社名、製品名は、各社の商標及び登録商標です。

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