アジャイル開発とウォーターフォール開発を徹底比較!組み合わせて使うには?
2023.10.20

開発手法として広く知られる「アジャイル開発」と「ウォーターフォール開発」。それぞれの特徴や違いを理解し、プロジェクトに最適な方法を選択することは非常に重要です。この記事では、アジャイル開発とウォーターフォール開発の基本から、それぞれのメリット・デメリット、そして両方を組み合わせて使う方法について詳しく解説します。開発手法の選択に迷っている方、最適な方法を探している方におすすめの内容となっています。



 1.アジャイル開発とは?

アジャイル開発はソフトウェア開発の手法の1つで、変化に強く、迅速に対応可能な点が特徴です。後述するウォーターフォール開発とは異なり、アジャイル開発は繰り返しのサイクル(イテレーション)を重視し、短期間での成果物の提供を目指します。

アジャイル開発の流れ:

  1. 要件定義: プロジェクトのゴールを明確にし、ユーザーストーリー(ユーザー視点の要望)やプロダクトバックログ(優先度の高いタスクや機能のリスト)を作成。これが開発の基盤となります。
  2. 設計: ソフトウェアの全体構造を考えます。アジャイルでは変更を前提とした柔軟な設計が求められます。
  3. 開発: コードを書いていきます。短いイテレーション(通常は2〜4週間)ごとにリリースできるようにスコープ(開発範囲)を事前に定めておきます。
  4. テスト:アジャイル開発ではテストを繰り返し行います。テスト駆動開発(TDD)のようなアプローチが推奨されることもあります。
  5. レビュー: 顧客にサービスを利用してもらい、フィードバックをもらいます。その後チームが集まって振り返り(レトロスペクティブ)を行い、改善点や次回のタスクについて話し合います。

アジャイル開発には、スクラムやカンバンなどのフレームワークがあり、プロジェクトの特性に応じて選択します。



 2.ウォーターフォール開発とは?


ウォーターフォール開発も、ソフトウェア開発の代表的な手法で、一つのフェーズが終わると次に進むといった特徴があります。計画や設計の段階での変更が少なく、確定的な計画に基づいて開発されることが多いです。

ウォーターフォール開発の流れ:

  1. 要求収集: 顧客や関係者から詳細なシステム要件や機能を収集します。これが開発の基盤となります。
  2. システム設計: 収集した要件を基に、ソフトウェアの大枠の設計。比較的、変更が少ないことが特徴です。
  3. 実装: 設計に基づき、具体的なプログラムコードを作成します。変更が難しいため、設計の精度が求められます。
  4. テスト: 作成したソフトウェアが要求を満たすか確認し、問題点を修正します。
  5. 導入: 作成したソフトウェアを実際の環境にデプロイし、動作確認を行います。
  6. 保守: リリース後も継続的に更新やバグ修正を行い、品質を維持。継続的にメンテナンスしていきます。

ウォーターフォール開発は、要件定義が明確で変更の少ないプロジェクトに適しています。しかし、変更が多い現代の開発環境では、アジャイル開発もよく採用されています。



 3.アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い


市場の変化に柔軟に対応していくには、開発手法の選択は重要です。アジャイル開発とウォーターフォール開発は、背景や方法が異なります。ここでは、その5つの違いを解説します。

 アジャイルウォーターフォール
①開発手法の起源ソフトウェア開発の現場での要件
変更の頻度や技術の急速な進化への対応
ソフトウェア開発を職人芸的な作業から
脱却し、工業製品の製造方法に移行するため
②柔軟性高い低い
③成果物提供の速さ速い遅い
④顧客との
コミュニケーション
多い開発途中では少ない
⑤開発チーム一定以上のレベルが必要初心者でもチームに入れやすい

① 開発手法の起源

アジャイル開発は1990年代末に生まれ、変化に迅速に対応する手法として注目されました。2001年にアジャイルマニフェストが発表され、その価値観が明確になりました。一方、ウォーターフォール開発は1968年にNATOの会議で提唱され、工業製品の製造方法を取り入れた開発手法として知られています。

② 柔軟性

ウォーターフォール開発は、開発初期に要件を定義し、一方向に進行します。変更は難しく、手戻りが発生すると時間とコストがかかります。アジャイル開発は、短いサイクルで開発し、変更や調整が容易です。フィードバックを積極的に取り入れ、価値を最大化します。

③ 成果物提供の速さ

ウォーターフォール開発は、開発終了後に成果物を提供します。アジャイル開発は、短いサイクルで中間成果物を作成し、フィードバックを取り入れます。これにより、期待と成果物のギャップを狭めます。

④ 顧客とのコミュニケーション

ウォーターフォール開発では、初期の要件定義後、顧客とのコミュニケーションが減少する傾向にあります。成果物が完成するまでの間、顧客は進捗を確認しにくいため、期待とのズレが生じるリスクが高まります。対照的に、アジャイル開発では、頻繁に成果物を提供し、顧客からのフィードバックを受け取ります。これにより、開発の途中でも方向性を修正しやすくなります。

⑤ 開発チーム

ウォーターフォール開発は、各段階のタスクが明確なため、特定のスキルを持つメンバーを適切なタイミングで配置できます。比較的、初心者も取り入れやすく、成長のサポートがしやすい環境があります。一方、アジャイル開発では、チームが自走することが前提です。メンバーは多様なスキルを持つ必要があり、全員が積極的にタスクを担当し、問題解決を進める姿勢が求められます。



4.アジャイル開発とウォーターフォール開発のメリット・デメリット


開発手法の選択はプロジェクトの成功に影響します。ここまでで解説したように、アジャイル開発とウォーターフォール開発は異なる特徴を持ちます。それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

 アジャイルウォーターフォール
メリット柔軟性顧客満足度の向上早期の成果物
提供リスク低減
明確な計画情報の文書化明確なフェーズ
変更の抑制
デメリット計画の不確実性高いコミットメント要求継続的な
顧客の関与スコープの拡大リスク
柔軟性の欠如リスク発見の遅延開発期間の
長期化顧客とのコミュニケーションの少なさ

① アジャイル開発のメリット・デメリット

メリット:

・ 柔軟性: 変更があっても対応が容易です。市場の変動や新しい要望にも迅速に応じることができます。

・ 顧客満足度の向上: 顧客とのコミュニケーションを密にすることで、その声を製品に反映しやすいです。

・ 早期の成果物提供: 短期間でのアウトプットが期待でき、早い段階でのフィードバックが得られます。

・ リスク低減: 高頻度のテストにより、問題を早く発見し、修正がスムーズに行えます。

デメリット:

・ 計画の不確実性: 変更の柔軟性から、全体の計画からズレが生じやすくなります。

・ 高いコミットメント要求: チーム全員の協力と理解が不可欠です。また、メンバーには一定のスキルが
  求められます。

・ 継続的な顧客の関与: 顧客の継続的な参加が求められ、負担が増えることがあります。

・ スコープの拡大リスク: 要望の増加により、計画が拡大し、コストオーバーのリスクが高まります。

② ウォーターフォール開発のメリット・デメリット

メリット:

・ 明確な計画: 初期段階での計画が明確なため、期間やコストの予測がしやすいです。

・ 文書化: 各段階での詳細なドキュメントが整備され、後のレビューや継続的な管理が容易です。

・ 明確なフェーズ: 段階ごとのタスクが明確で、集中して作業が進められます。

・ 変更の抑制: 一度計画が決まると変更が少なく、安定した開発が期待できます。

デメリット:

・ 柔軟性の欠如: 途中での変更が難しく、新しい要望への対応が困難です。

・ リスク発見の遅延: 問題の発見が遅くなり、修正のコストが増大する可能性があります。

・ 開発期間の長期化: 製品の完成までの時間が長く、市場の変動に対応しにくいです。

・ 顧客とのコミュニケーションの少なさ: 開発初期のフィードバックが少なく、顧客の期待を
  満たすのが難しい場合があります。

ウォーターフォール開発は明確な計画や一貫性が求められるプロジェクトに適していますが、その計画性がボトルネックになることもあります。



5. アジャイル開発とウォーターフォール開発、どちらを選ぶ?


「アジャイル開発かウォーターフォール開発、どちらがいいの?」という疑問をよく聞きます。答えは一概には言えません。プロジェクトの規模や要件、顧客の期待、開発者のスキルによって選ぶべき手法が変わります。

 ① プロジェクトの規模で選ぶ

小規模なプロジェクトや短期間での開発にはアジャイル開発が適しています。変更が多い場面や迅速なフィードバックが求められる場合に強みを発揮します。一方、大規模なプロジェクトや多くの部門が関わる場合はウォーターフォール開発が向いています。合意を得ながら計画的に進めることができるからです。

 ② 要件で選ぶ

プロジェクトの要件が初めから明確で変更の少ない場合はウォーターフォール開発が向いています。一方、要件が変動する可能性がある場合や、完全な要件定義が難しい場合はアジャイル開発が適しています。

 ③ 顧客の要望で選ぶ

開発において、顧客とのコミュニケーションは重要です。ウォーターフォール開発は、初期段階での要件や仕様をしっかりと固定することを前提としています。このため、要件の変更が少ない、または明確な仕様を希望する顧客に向いています。

一方、アジャイル開発は開発途中でも要件の変更や追加を柔軟に受け入れることができます。顧客が途中での確認や変更を希望する場合、アジャイル開発が適しています。

 ④ 開発者のスキルで選ぶ

開発者のスキルや経験は、プロジェクトの成果に直接的な影響を与えます。ウォーターフォール開発は、各フェーズでの専門的な知識や技術が求められるため、特定のスキルを持つ開発者が必要です。例えば、設計やテストの専門家がチームにいる場合、ウォーターフォール開発が向いています。

アジャイル開発は、チーム全体での柔軟性や多様なスキルの組み合わせが鍵となります。自己組織化するチームや、新しい技術を学びたい開発者にはアジャイル開発が適しています。



 6.アジャイル開発とウォーターフォール開発を組み合わせる


アジャイル開発とウォーターフォール開発は一見、正反対なように見えますが、組み合わせることも効果的です。具体的には、初期段階でウォーターフォール開発のようにスコープや要件を明確にし、後のフェーズでアジャイル開発を取り入れる方法が考えられます。


こうしたハイブリッドアプローチのメリットは多いです。ウォーターフォール開発の手法で全体像を捉え、計画のズレを防げます。アジャイル開発の手法で顧客の要望に柔軟に対応し、迅速に価値ある成果を提供できます。


しかし、ハイブリッドアプローチを実施するには、ウォーターフォール開発とアジャイル開発の両方のスキルを持つ人材が必要な点には留意が必要です。



 7.まとめ


アジャイル開発とウォーターフォール開発、これらの手法の適切な使い分けは、現代のプロジェクト環境での成功の鍵ともいえます。アジャイル開発は迅速なフィードバックと柔軟性を持ち、ウォーターフォール開発は計画的で確実性があります。この二つの手法を組み合わせることで、プロジェクトのリスクを低減し、効率的な開発が可能となります。


しかし、このような複雑な手法を適切に使いこなすIT人材は極めて少ないのが現状です。特に、外部からの新たな採用を考えると、求めるスキルセットを持つ人材の供給は限られています。その場合、自社の従業員を育成することが有効打の1つとなります。


トレノケートでは、アジャイル開発を推進できる人材を教育するカリキュラムを提供予定です。

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伴走型

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