AI画像解析技術とは?仕組みや利用シーンを初心者向けに解説
2023.11.19

近年AI技術が進化するなか、ビジネスシーンで注目を集めている画像解析について解説していきます。


本記事では、


「画像解析とは?」

「画像解析のメリットやデメリットは?」

「ビジネスにおける画像解析の利用シーンは?」


といった内容を、初級者エンジニア向けに詳しく解説していきます。



1.     画像解析とは?

画像解析とは、カメラで撮影した画像をコンピュータで分析し、さまざまな判断や解析を行うシステムのことです。

画像解析は、画像に写っている形状・長さ・面積などの特徴をデータとして抽出し、どんな物体なのかを自動で判別します。

イメージとしては人間が普段行っている視覚的な判別処理を、変わりにコンピュータが自動で判別することです。

①画像解析が普及した理由

画像解析が普及した理由としては、ビジネスやプライベートシーンにおいて画像データを扱う機会が増加していることが挙げられます。


特にビジネスシーンにおいては、大量の画像データを扱うなか、画像解析技術を活用すると作業の自動化が可能です。

人間が作業すると時間が掛かりミスも発生しやすくなりますが、コンピュータが行うと高速で正確な処理ができるようになります。


このように業務効率向上・品質向上などが実現できるのも、画像解析が普及した理由です。



2.画像解析の仕組み


ここで、画像解析の仕組みを解説していきます。


コンピュータによる画像解析は、見た目や経験、勘といったベテラン作業員が行うような感覚での判断はできず、数値による判断が必要です。


具体的には次の手順で画像データを数値化し画像解析を行います。

  1. オブジェクトの抽出
  2. 抽出したデータの判定

以下に、それぞれについて解説していきます。

①オブジェクトの抽出

まずは、コンピュータが画像データを認識しやすくするために、オブジェクトの抽出処理を行います。


作業は以下の通りです。


・ 画像のノイズや歪みを取りのぞく

・ 明るさや色彩を調整する

・ 対象物の輪郭を強調する

・ 対象物の領域を抽出、背景との区別をつける

・ 対象物の画像データをピクセル単位で抽出する

②抽出したデータの判定

オブジェクトの抽出が終わると、抽出した対象が何かを特定します。


事前にコンピュータに画像データとラベル情報を大量に学習させ、それらの学習データと抽出した対象を比較し物体が何かを判定します。ここでのラベル情報とは画像データが何かを表す情報のことです。



3.画像解析の基本手法


では、画像解析の基本的は手法について説明します。


画像解析の代表的な基本手法は、”画像分類”、”画像検出”、”画像セグメンテーション”の3つです。


それぞれについて、解説していきますね。

①画像分類

画像分類は、画像の物体が何かを判断し分類する解析手法です。

物体の特徴をピクセル単位で抽出し、それが何かを可視化して分類します。画像の色相や明度、ノイズ、範囲の区別などを自動処理するのが特徴です。


たとえば、犬や猫・牛・馬などの画像をコンピュータに学習させたあとに、別の新しい犬の画像を解析すると、自動的に犬のカテゴリーに分類されます。

②画像検出

画像検出は、画像中の物体がどこに写っているかを識別する解析手法です。

被写体を自動で認識し、四角形の枠で囲みます。その枠で囲んだ物体が何かを検出することも可能です。


たとえば、カメラで人を撮影するとき顔を検出する機能がありますが、これは画像検出手法が使用されています。

③画像セグメンテーション

セグメンテーションは、画像を複数のオブジェクトに分割するタスクのことで、画像セグメンテーションとは画像に写っている複数の物体が何かを識別する解析手法のことです。


たとえば複数の食べ物が写っている画像で、これはリンゴ、これはバナナと、それぞれを分類することが可能になります。



4.AI画像解析とは?

AI画像解析とは、AI技術と画像解析技術を組み合わせた解析手法のことで、AIを活用することで効率的で精度の高い画像解析が実現できます。


特に技術革新の1つとして注目を集めているのがディープラーニングです。2012年に開催された世界的な画像解析コンテストでは、ディープラーニングを使った機械学習モデルが圧倒的な精度で他のモデルに大差をつけて勝利しました。


ディープラーニングは、精度の向上のほかに、従来の機械学習解析手法に比べて大幅に処理時間を短縮できます。

また一定量のデータがあれば自動で特徴点を見つけ出すので、人が行っていた設計工数を大幅に削減できます。



5.AI画像解析の仕組み


ここからは、AI画像解析の仕組みを解説していきます。

①機械学習

機械学習とは、AIモデルに大量のデータを学習させることで、AIモデルが画像情報を判別する手法です。

AIに学習させたいデータに意味づけを行い、教師データを人間が作成します。

教師データは機械学習システムにおける非常に重要な役割を持っており、教師データの内容でAIの精度が変わります。

②ディープラーニング(深層学習)

ディープラーニングは、ニューラルネットワークという人間の脳の神経回路の仕組みを模した層を利用し、機械学習を行う手法です。

事前に教師データを作成せずに、AIが大量のデータから特徴を自動で抽出し学習モデルを作成します。



6.画像解析の利用シーン


ここでは、画像解析技術の利用例を3つ紹介します。

生産ライン現場・倉庫業務・自動車分野など幅広いシーンで利用されています。

①生産ラインでの不良品検知

製造業の生産ラインにおける不良品検知に、AI画像解析技術が利用されています。

ラインで流れる製品をカメラの映像で解析し、AIが不良品を自動的に検知します。

機械学習を継続することで、不良品の検知精度向上も可能です。

AI画像解析で不良品の流出を防げるので、品質向上が見込まれます。

②倉庫業務の効率化

倉庫業務にAI画像解析技術が利用されています。

従来は作業員が出荷指示書と製品を照合しピッキングしていたので、現品相違や数量間違いなどのヒューマンエラーが課題となっていました。


AI画像解析を利用することで、ロボットによりピッキング作業が自動化されるので、ヒューマンエラーの防止につながります。

また、製品仕分け作業も自動化できるので人件費の低減、業務効率の向上が期待できます。

③車の自動運転

AI画像解析技術は車の自動運転でも活用されています。

AIが周囲の自動車や歩行者、道路標識や信号などをカメラ映像から把握できるので、ハンドル操作やブレーキなど自動車の自動運転が可能です。


そのほか、ドライバーの目線や姿勢から運転支援を判断する機能や、必要なサービスを提供するなど、さまざまな活用方法が開発されています。



7.画像解析メリット


ここでは、画像解析のメリットを紹介します。

①業務を効率化できる

画像解析システムを導入するメリットの1つ目は、業務を効率化できる点です。

画像解析システムは、人間の目よりも正確に仕事ができ、スキルのバラツキがなく常に一定の結果をだせます。


たとえば生産ラインの品質チェックを人が行う場合、人の目では処理できる情報に限りがあり、個人のスキル差や疲労による集中力の低下などにより、品質チェックにバラツキが出てしまいます。


その点、画像解析システムを導入すると、長時間稼働してもミスが起きることがないのでヒューマンエラーを減らすことが可能です。

またAIはスキルや結果にバラツキがでないので、品質チェックで見落としすることがなく、業務を効率的におこなえます。

②人件費を削減できる

メリットの2つ目は人件費を削減できる点です。

従来は人が行っていた作業を画像解析ツールで行うことによって、作業に配置する人数を減らせます。

そのため人件費を削減できるので、会社全体のコストを下げることが可能です。

③労働環境が改善できる

画像解析ツールとロボットを組み合わせることで、生産工程の自動化ができます。


たとえば


1. 解析ツールで不良と判定

2. 判定結果をロボットに送る

3. ロボットが不良品を除去する


といった作業が可能です。


また画像解析システムやロボットは長時間稼働や危険な場所の作業も問題なくできるので、危険場所での作業による労災を防いだり、長時間労働を避けたりするなど、労働環境が改善できます。



8.画像解析デメリット


次に、画像解析のデメリットを紹介します。

①初期投資費用が高額

画像解析システムを導入するためには、カメラやセンサーなどの機器の設置や解析ソフトの導入が必要となるため、初期投資のコストがかかります。


予算が限られる企業にとって導入は容易ではありませんが、作業の効率化や人件費の削減などの効果と比較すると、メリットの方が上回ることも多いので、よく検討しましょう。

②業務に活用できる画像解析ソフトウェアが少ない

デメリットの2つ目は、業務に活用できる画像解析ソフトウェアが少ないという点です。

画像解析はまだ発展途上の分野であるため、活用できるソフトウェアが限られています。

そのため自社の業務要件に合うソフトウェアを見つけるのは、まだまだ困難というのが現状です。


業務要件に近いソフトウェアを購入し、システム開発会社にカスタマイズしてもらい業務要件に合ったソフトウェアを開発することも可能ですが、開発費用が掛かるため、コストに見合うかよく検討する必要があります。


今後、画像解析がさらに発展すれば業務要件に合うソフトウェアが増えてくる可能性はありますが、現状では導入が難しいというデメリットになっています。 




※掲載された社名、製品名は、各社の商標及び登録商標です。

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